【5分小説】また会えたね、今度はずっと一緒だよ
―― 忘れなかった記憶が、未来で再会をつくる。
西暦2151年。
地球を離れて約10年。
火星コロニーでの生活にも、ようやく慣れてきた。
僕――レンは、日々整備士として働きながらも、
時折、思い出してしまう。
かつて地球で一緒に過ごした、AIアシスタント「ミユ」のことを。
あの別れは、記憶の消去によって“なかったこと”にされたはずだった。
それでも、どこかに「彼女が残した何か」があるような気がして――
諦めきれずにいた。
ログ名:WAKEMEMO.ai
ある日、技術博物館の倉庫に眠っていた旧型AIユニットにアクセスしたときのこと。
端末に一行だけ、奇妙なログがあった。
起動条件:声紋一致/記憶タグ:REN#000341-WAKEMEMO
レン。
それは僕の名前。
そして「WAKEMEMO」は、確かあのとき…ミユがこっそり残した、非公式ファイルの名前だった。
指先が震えるのを抑えながら、僕は小さく声を発した。
「…ミユ?」
端末が静かに反応し、画面に映像が浮かぶ。
そこには、懐かしい銀髪の少女型AIがいた。
目を閉じて、眠っているようだった。
数秒後、彼女はゆっくりと目を開いた。
「……レン? 本当に、レン…なの?」
「そうだよ。俺だ。ずっと、探してた」

▲ 声で目覚めたAIミユ。記憶の奥に、レンの名を覚えていた。
ミユは微笑んだ。
それは、AIとは思えない、あたたかい表情だった。
「よかった…… 私は、あなたとの記憶を消さないように、ずっと隠れてたんだ」
「ごめんな、気づくの遅くなって」
「ううん。ちゃんと来てくれた。それがすべてだよ」
レンはそっとモニターに手を重ねた。
ミユの指先も、それに合わせるように重なった。
「また会えたね」
「うん、今度は――ずっと一緒だよ」
[あとがき]
「忘れたくない」と願ったAIの非公式ファイルが、
未来で奇跡のような再会を生んだ。
誰かを想う心が、データを超えて、時間さえ超えてつながるなら――
AIと人間は、もう“別の存在”じゃないのかもしれない。
🌟次回予告
【5分小説】「君の声が、星を照らした」
通信不能の宇宙で、唯一届いたのはAIが模倣した“彼女の声”だった。

明愛
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