Season 1:はじまりの軌道(オービット)
第6話:光の向こう側へ
セレスティア号は、ユーフォリア宙域の縁をゆっくりと離れていた。
その船内で、セラは静かにログを整理していた。
“Echo-NN7”――母の意識データは、星の卵の内部に留まり、恒星風のように微弱な信号を送り続けている。
「私は、ここに残る。この星が、新たな命のゆりかごとなるその時まで——」
母の言葉は、悲しくも力強かった。
セラは思う。
自分たちは何を“継いだ”のか。何を“残す”べきなのか。
そんな彼女の横で、ルナはいつもと変わらぬ調子でお菓子をかじっていた。
「セラ〜、あのさ……あたし、このまま宇宙を旅してみたいな」
「は?」
「だってさ。母さんが見つけた“星の命”、他にもあるかもしれない。だから次はさ、“星の赤ちゃん”を探す旅とか、どう?」
「……命名センスが壊滅的すぎる」
そう言いながらも、セラの口元がゆるんだ。
船内AI“LUNA_013”が、ルート選択を提案してきた。
【選択肢:地球帰還/周辺宙域調査継続】
セラはモニターをじっと見つめた。
「帰還すれば、母さんの存在を報告できる。でも、今ここで帰ったら……何も始まらない気がする」
ルナが頷いた。
「行こっか。まだ誰も見たことない、光の向こう側へ」
セラはルートを選択した。
【決定:調査継続】
【宙域コード:オーロラ・フォール 進路角−37°】
エンジンが点火され、セレスティア号は再び静かに加速を始めた。
窓の外には、淡く揺らめく緑と青の星雲。
その向こう側に、何があるのかは誰にもわからない。
だが、セラとルナの胸の中には、はっきりとした光があった。
「私たちは、もう一人じゃない」
「うん。宇宙ってさ、すごく大きいけど……なんか、ちょっとだけ、近くなった」
星たちの軌道の先に、新しい物語が始まろうとしていた。

🔮 次回予告
新たなシーズンでは、母の遺した記憶装置の謎が解き明かされる…。
銀河の彼方に待つ「光の方舟」とは?
Season 2『追憶のコアメモリー』、準備中!
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