ツインライト・オービット ―双子たちの星巡り―(1-5)

第5話:星を継ぐ者たち

Season 1:はじまりの軌道(オービット)

第5話:星を継ぐ者たち

星々の間を漂う“ユーフォリア宙域”。

そこは、未登録の重力変動が複雑に絡み合い、正確な航行が困難とされる領域だった。

セレスティア号は、航行支援AI“LUNA_013”の補助でその宙域に進入した。

船内には不思議な静寂が流れていた。

「ここ、空気が違う気がする」

ルナが言った。

「宇宙に空気なんて……いや、でもわかるよ。気味が悪いくらい静かだ」

セラも、どこか胸騒ぎを感じていた。

突然、通信パネルにノイズが走る。

「……セラ……ルナ……」
「また、母さんの声……?」

声の主は、確かに母・ナナミのものだった。

しかし、それは録音ではなく、リアルタイムのように思えた。

「この宙域に、まだ“生きた信号”が残ってるの?」

LUNA_013が反応した。

「この地点には、過去に“人間の脳神経パターン”をデジタル転写した信号の痕跡があります。コード名は——“Echo-NN7”。ナナミ・カナエ博士の略称です」
「ママの“意識”が……ここに?」

構造物が見え始めた。

それは、巨大な球状構造物。

まるで“星の卵”のような、なめらかな殻を持つ未知の人工物だった。

第5話:星を継ぐ者たち

【接近警告:重力異常を検知】

セラが操縦桿を引くと同時に、船体が激しく揺れた。

「ダメだ、引き離される!」
「セラ、なにか……聞こえる。頭の中に、ママの声……!」
「ルナ……セラ……あなたたちは、“星を継ぐ者たち”。私は、ここに残る」
「母さん……本当にここに……?」
「この場所は、命の原型に近い。私は、ここでそれを“守る”ために残る決断をしたの。ごめんね……けど、ありがとう」

セラは震える指でコンソールを握りしめた。

「……母さん、死んでなんかいなかった。別の形で、生きてた」

ルナは涙をこらえながら、微笑んだ。

「会えて、よかったね」

🔮 次回予告

すべてを知った姉妹が選ぶ未来とは——。
母の残した記憶、見つけた希望、受け継ぐ使命。
宙域にゆらめく光の向こう側で、新たな航路が始まる。
第6話:光の向こう側へ
““旅の終わりと、始まりの光””

👈 第4話:始まりの記録(メモリー) を読む   第6話:光の向こう側へ を読む 👉

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